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第8話 夜光の蝶(01)

Auteur: 星琴千咲
last update Dernière mise à jour: 2025-06-11 22:32:48
雪枝がスタジオを離れたら、悠治はまたゾンビ状態に戻った。

なんとなくそれを予測した大介はさほど驚かなかった。

それでも、毛布で体を巻き、床で芋虫のふりをする悠治に我慢できなくて、そのお尻を蹴った。

「どうした。妹にいいとこを見せつけるためにエネルギーを使い切れたか?」

「……1万文字も10本の企画書も無理だから、今日から、帰らないことにする」

悠治はびくともしなく、毛布を口にかけたまま悶々と答えた。

「……」

このスタジオは大介の自宅でもある。

脅かしで悠治に1万文字のことを言い放ったが、本当に帰らなかったら、大介のほうも困る。

「1本だけでも、真面目なものを上げれば、好きなところに行っていい」

仕方がなく、大介は譲った。

「面倒だし、お前の言いなりになりたくない……ここで引きこもりをするほうが楽だ……」

「#妹さんはその企画に期待しているんだ!失望させてもいいのか?」

「じゃあ、雪枝が来る時にやればいい」

「……はやり、まともなものを書けないわけじゃない……書かないだけだな」

大介の顔色は一層暗くなった。

「知ってたらもう聞くな……寝る……」

「今は午後5時だ!」

午後5時から悠々と寝落ちの悠治と違い、大介は夜中まで奮闘した。

小林から催促のメールがあったので、この前の企画の三稿目をもう一度チェックしてから彼に送った。

悠治の騒ぎのせいで、シナリオライター探しの件を完全に忘れていた。

悠治をシナリオライターとして雇ったのは悠子に頼まれ、いいえ、脅かされたため、もともと期待していない。

さっそく募集要項を作って、クリエイターエイジェンシーのサイトに掲載した。

それからSNSでいろいろ探って、ベッドに上がったのはもう深夜2時。

夢の中で、何か重いものが腹に乘っているのを感じた。

「……?」

確かに、前から猫を飼おうと思って、飼育知識についていろいろ勉強した。

猫はなついている飼い主の腹に乘るのが好きのようだ……

……でも、まだ猫を飼っていない……

じゃあ、一体、何が……

(!!)

いきなり、スタジオに人型の「芋虫」が一匹いることを思い出した。

大介はパッと目を開いて、身を起こそうとしたが、重い何かにベッドに押し付けられて、動けなかった。

「!!」

目の前にあるのは悠治の顔だけど、その顔から感じたオーラは悠子の物だ。

悠子は片膝を大介の腹に押し付けて、両手で大介の両肩を
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